企業が求める「70歳までのベテラン」と、単に定年延長に巻き込まれるベテランは全く別。あなたが市場価値を保ったまま歳を重ねるには、デジタル・AI活用のスキルが「要・不要」ではなく「生き残り・脱落」の分水嶺になってしまった現実を見つめる必要があります。
ニュースの要約と背景
帝国データバンクの調査で、全国1289社の企業に「従業員に何歳まで活躍してほしいか」と尋ねた結果、平均67.9歳、中央値70歳という回答が得られました。法定の65歳雇用確保措置を3歳上回る水準です。規模別では小規模企業ほど期待年齢が高く(68.3歳)、実際に65歳超の従業員が現役で働いている企業は約7割に上ります。
しかし、この「70歳まで働いてほしい」という回答には、重大な選別が隠されています。経営者は全員のベテランに同じ期待をしているわけではなく、健康で現場価値を生み出す人材と、事務作業や会議に依存するデジタル弱者とで、まったく異なる判断をしているというのが記事の核心です。
プロの視点からの考察
転職エージェントとして働いていた時期、私は多くの企業の人事部長や経営者から「ベテランは重たい」という本音を何度も聞きました。給与は高い、融通性は低い、デジタルは使えない。新しい事業や部署立ち上げの時には、むしろ邪魔になることすら珍しくないのが実情です。
この調査で「70歳まで」という数字が並ぶ一方で、実際に誰が残るか、誰の処遇が上がるかは、その人が「企業の変化に対応できるか」「AIやツールをレバレッジとして使いこなせるか」に100%近く依存していることを、現場感覚として強く感じています。
地方銀行で融資を担当していた頃、定年間近の職員を見ていて気づいたことがあります。融資判断に20年の経験が活きている人と、単に定型業務に甘えている人の区別は、その人がシステムやツールを「与えられたもの」と捉えるか、「自分の仕事を加速させるレバレッジ」と捉えるかで完全に分かれていました。
今、私がAIを業務に組み込んで効率化を進める中で痛感するのは、AIに「仕事を奪われる」と恐れる人と、「AIで単価を上げる」と考える人では、3年後の市場価値が天と地の差になるということです。
典型例を挙げます。営業管理職で今年54歳の男性を想定します。彼は年収700万円程度で、これまで営業目標管理を勘と経験で進めてきました。ここからの選択肢は二つ。
パターンA「AIは使わない派」:売上データ分析や予測をExcelのピボットテーブルで手作業。部下からの報告書は紙や返信メール。10年の経験をもとに「この人は売れる、この人は難しい」と判断。60歳で定年延長制度の対象になると「70歳まで仕事があるし、給与も今の○割」という前提で過ごす。しかし企業のAIツール導入が進む中、経営層は「人間の勘に頼らず、データドリブンの予測で部門を回したい」と考え始める。60代半ばになると「ベテランの経験知より、システムのアウトプット」が重視される。市場価値は年1%ずつ下がり続ける。
パターンB「AIでレバレッジをかける派」:ChatGPTで営業データ分析のプロンプトを試行錯誤。Pythonスクリプトで日次集計を自動化。20年の営業経験知をもとに、「どんなデータを見るべきか」という設問設計をAIに投げかける。部下への指導も「分析の読み方」に軸足を移す。すると彼は「経験+AI使い手」の二重価値を持つようになり、60代でも「この人にしかできない戦略営業分析」として市場価値が上昇。転職市場でも引く手あまた。
企業が「70歳まで」と言う時、実は「あなたの体と経験を70歳まで租借する」ではなく「あなたが生み出す付加価値を70歳まで必要とする」という意味なのです。その付加価値が、ツールやAIの進化によって陳腐化していないか、むしろ新しいテクノロジーと融合することでさらに高まるか、という軸で判断されています。
実務に活かすためのポイント
- 今月中に、自分の日次業務の中で「手作業で15分以上かかっている作業」を3つ洗い出す。そのうち1つをChatGPTやExcel関数・GASで自動化するプロトタイプを作ってみる。例えば営業成績表の集計、顧客リストの分類、レポートの定型部分の作成など。目的は完璧さではなく「AIツールに仕事を指示できる側に回る体験」です。1週間で完成させるくらいの軽さで始めること。
- 今後3年間の「自分の市場価値を上げるスキル投資」として、月5,000〜10,000円の予算を確保し、業務に関連するAIツール講座(UdemyやCodeCampなど)か簿記・データ分析などの資格取得に充てる。地方銀行時代に融資判断をしていた実感として、多くの人は「お金がない」ではなく「優先順位をつけていない」だけです。月1万円あれば、年12万円。5年で60万円。これは「60代で市場価値ゼロになるリスク」と比べたら圧倒的に安い投資です。
- 今年中に、上司や経営層に対して「自分がAIやツールを活用して何ができるようになったか」という成果報告を、最低1回は行う。単なる作業効率化ではなく「それにより会社の何が改善したか」という観点で。これは「あなたが新しいテクノロジーに適応している人材」という評価を勝ち取る、最短の手段です。
キャリアやビジネスの選択肢を広げるために
この調査で「70歳まで」という回答が並ぶ企業の本音は、実は「あなたを65歳で切るのは損」という判断が、あくまで条件付きという現実を見ることです。
キャリア面では、今後5〜10年で「昭和型の勘と経験の価値」はどんどん相対的に下がり、代わりに「データの読み方」「AIを使った意思決定」「若手へのデジタル指導」といったスキルが急騰します。あなたが50代なら、60代でも稼げる人材になるには「自分の経験をAIに翻訳する能力」を今のうちに身につける以外に道はありません。転職を視野に入れるなら、その前に実績を作ること。副業で小規模クライアント向けにコンサルティングやデータ分析を試してみるのも有効です。
経済基盤面では、「70歳まで働ける」という前提だけに頼ると、想定外の早期退職や処遇ダウンの時に詰みます。今から月の支出を可視化し、実際に60歳・65歳・70歳で家計が回るシナリオをシミュレーションしてください。融資担当時代に見てきた現実では、「定年延長があるから」という甘い前提で貯蓄が手薄になり、いざという時に困る人が大半です。また、社内での昇進頭打ちが見えたら、社外での単価設定を今から練習すること(講演料、執筆料、業務委託など)。これが「70歳までの安定」から「70代以降の選択肢」への転換点になります。
参照元: 「70歳まで働いてほしい」人とは? 企業が本当にほしいベテラン、いらないベテラン (ITmedia ビジネスオンライン 最新記事一覧 / 2026-09-25T23:00:00+00:00)


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