自治体職員の離職が加速する中、従来の「辞めさせない育成」では通用しなくなりつつあります。AIが定型業務を圧縮し、人間にしかできない仕事の線引きが明確になる時代に、組織も個人も生き残るには、退職を「卒業」と捉え直す発想の転換が必要です。この記事では、融資審査と採用現場を見てきた経験から、公務員・民間を問わず、あなたのキャリアをどう構築すべきかを実践的に解きほぐします。
ニュースの要約と背景
自治体では2025~2026年度にかけて若手・中堅職員の離職が相次いでいます。ニュースの論点は、「辞める職員をいかに引き留めるか」という問題設定そのものを変えるべき、というものです。
AIが進展すれば、公務員の仕事の中で「AIで代替できる部分」(定型事務、資料作成など)と「人間にしかできない部分」(判断、対人対応、創意工夫)の境界が明確になります。前者が削られれば、若手が段階的に成長する訓練機会も同時に失われます。その結果、「自治体に在職し続ける理由」が「辞める理由」を下回りやすくなるわけです。
記事が提唱するのは、「離職前提」の採用・育成設計です。自衛隊のように「基礎訓練→現場経験→卒業」という流れを組織化し、退職を「裏切り」ではなく「卒業」と位置づけ直す。そこで身につけたスキルが次の職場でも活かせるような人材育成に切り替えるという考え方です。
プロの視点からの考察
この問題は、公務員だけの話ではありません。むしろ民間企業こそ、この転換に取り組まなければ、優秀な人材の市場価値を自社内で活かせないまま失い続けることになります。
融資を担当していた頃、個人事業主や中小企業の経営者と話す中で気づいたことがあります。「従業員が辞めるのは申し訳ない」と罪悪感を持つ経営者ほど、実は人材育成に投資していません。不確実な人材投資よりも、短期の利益を優先するからです。その結果、組織に残った人も市場価値が上がらず、給与も上がらず、さらに優秀な人から辞めていく――という悪循環に陥ります。
転職エージェントとして採用現場を見てきた時期には、これがより明確になりました。企業の採用担当者が本当に欲しいのは、「前職でどんなスキルを身につけたか」です。転職者の市場価値は、個人の能力ではなく「前職で何を学んだか、そのスキルがどこまで汎用的か」で決まります。
典型的な例を挙げます。30代前半の営業職が民間企業から地方自治体に転職したケースがあります。自治体では3年間、予算管理と企画立案を主に担当しました。その後、民間の経営企画職に転職しましたが、その時の面接で高く評価されたのは「税務・予算構造の理解」「複数のステークホルダーと調整するプロセス」でした。つまり、公務員での経験が「汎用的なビジネススキル」と認識されたわけです。
ここが重要なポイントです。組織が「卒業生」を輩出することに前向きになれば、その組織の学習環境の質が自動的に上がります。なぜなら、「この職場で身につけたスキルは市場価値がある」という評判が広がるため、優秀な学生・転職希望者も集まりやすくなるからです。自衛隊が人気を保ち続けるのも、この好循環があるからです。
逆に「うちの会社で学んだスキルは、外では使えない」と評判になった組織は、採用難に陥ります。
実務に活かすためのポイント
1. あなたの現在のポジションで「汎用的スキル」を意識的に習得する(3ヶ月単位で棚卸し)
今やっている定型業務の中から「これはAIに置き換わる」と「これは人間にしか判断できない」を分類してください。後者に注力し、なぜその判断が必要なのか、何を根拠にしているのかを言語化する作業が、市場価値を高めます。月1回、30分でいいので「この月に学んだ非定型スキル」をメモしておく。これが転職時の職務経歴書になります。
2. 社内で「AIに仕事を奪われる」と嘆く人と距離を置き、AI活用に前向きな人のそばにいる(即座・1ヶ月以内)
組織内には、AI導入に抵抗する人と推進する人の両派がいます。後者のプロジェクトや勉強会に参加すること。そこでの学習速度は、前者の10倍以上です。AI時代に市場価値を保つかどうかは、「AIを敵と見なすか、道具と見なすか」という心持ちで既に9割決まります。
3. 「この仕事は何年で旬が終わるのか」を上司や先輩に聞く習慣をつける(今月中・1回、来月中・1回)
「このポストはあと5年で廃止になる見込み」「この業務はAIで8割自動化される」という情報は、多くの管理職が持っています。それを引き出すだけで、あなたの人材投資の方向性が一変します。「そうなる前に、どんなスキルを磨くべきか」という相談を、質問の形でぶつける。上司も答えやすくなりますし、あなたのキャリア意識の高さも示せます。
キャリアやビジネスの選択肢を広げるために
キャリア面での選択肢: 今この瞬間、あなたが属する組織が「人材の卒業を前提に育成している」のか、「人材の囲い込みを前提に育成している」のかを見極めてください。前者なら、その環境に感謝して、スキルの習得に全力を注ぎ、3~5年で市場に出すつもりで動く。後者なら、自分で副業やスキル学習で汎用性を高め、転職の準備を始める。どちらにせよ「辞めたら申し訳ない」という心理は、あなたの人材価値を低下させるだけです。
経済基盤面での選択肢: 給与水準が固定的な組織(特に公務員や大企業)にいるなら、組織内での昇進を期待するのではなく、「次のキャリア時点で給与交渉できるスキルセットを今積み上げる」という設計に切り替えてください。同じ給与なら、市場価値が高い人材ほど、転職時に給与を上げやすい。その意味で、「この仕事を通じて何を学べるか」という視点は、あなたの経済基盤の強化に直結します。
参照元: 退職は“裏切り”か? 自治体は「辞める職員を育てよ」AI時代の人材戦略 (ITmedia ビジネスオンライン 最新記事一覧 / 2026-09-08T22:00:00+00:00)


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